・ 銀行の窓口等で「成年後見制度の利用が必要だ」と言われた
・ 医者・医療連携室から「成年後見制度の利用を検討してほしい」と言われた
・ 地域包括支援センター・社会福祉協議会・ケアマネージャー等から成年後見制度の紹介を受けた

など、国の成年後見制度利用促進事業の影響もあり、「成年後見制度」という言葉を聞く機会が増えているかと思います。預貯金の出し入れ、不動産の売買、相続手続きなどを進めようとしたところ、「まず、成年後見制度を利用してください」などと言われ、手続きが先に進まないという課題を抱えている方もいらっしゃるでしょう。

 他方、「成年後見制度は使い勝手が悪い」、「成年後見制度を利用するとお金がかかる」、「手続きが複雑だ」、「後見人等による横領が心配である」など、成年後見制度にマイナスのイメージを持たれている方もいらっしゃるのではないかと思います。成年後見制度を利用することが適切なのかなど、悩んでおられる方は多いのではないかと思います。

 弁護士村林は、これまで、多数の成年後見等に関する相談を受け、成年後見等の申立案件を受任し、成年後見人等に就任してきた経験があります。成年後見制度を利用する予定のあるご本人からの相談・依頼、ご本人のご家族からの相談・依頼に加え、地方自治体・地域包括支援センター・社会福祉協議会・権利擁護センター・医療連携室等からの相談も数多く受けてきました。また、権利擁護センター・法人後見受任機関・成年後見中核機関の立ち上げ、運営にも関わってきた経験があります。これらの経験を活かし、様々な角度からアドバイスをさせていただくことが可能です。

・ 成年後見制度の利用を検討されているご本人・ご家族・ご親族の方々
・ 後見制度の利用が必要と思われている方を支援されている方(地域包括支援センター・社会福祉協議会・地方自治体・医療連携室・ケアマネージャー等。各組織からのご相談のほか、現場で活動をされている方からのご相談も歓迎します。)
・ 既に成年後見制度を利用されている方やそのご家族
・ 後見人等に就任されている方(親族・専門職・市民後見人など)
・ 権利擁護センター・法人後見・成年後見中核機関等の設立・運営に関与されいてる方

など、どなたからの相談もお受けすることが可能です。初回の相談・問い合わせは無料です。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

 支援者の方からのご相談に関するQ&Aはこちらをご参照ください。


弁護士に相談・依頼をするメリット


① 適切な制度のご提案、制度利用のサポート
 ご本人の課題・お悩みごとに応じ、適切と思われる制度のご提案をさせていただきます。
 成年後見制度もその他の制度も万能な制度ではありません。課題に応じ、適切な制度を使い分けていく(事案によっては複数の制度を併用する)必要があります。課題・お悩み事を丁寧に聞き取り、適切なプランをご提案します。
 また、事案に応じ、制度利用開始後のサポートも行います。

② ご本人・ご家族・関係者らへの説明
 多くの方にとって、成年後見制度等の制度はなじみのないものだと思います。制度を利用されるご本人及びご家族・関係者らに丁寧に説明をし、誤解のないよう、努めます。

③ 書面作成・裁判所対応
 いずれの制度も様々な書類を作成する必要があり、また、様々な書類を収集する必要がありますが、弁護士が、適切に対応をさせていただきます。(診断書や本人情報シートなど、一部の書類について、書類の取得等をお願いすることはあります。この場合も、取得方法等を丁寧に説明させていただきます。)。
 また、裁判所との連絡も、弁護士がすべて対応をさせて頂きます。ご本人や申立人が裁判所へ出頭する場合や裁判所調査官等がご本人を訪問する際の日程調整等も弁護士が対応いたします。

④ 関係機関からの相談にも応じます
 ご本人・ご家族からの相談のみではなく、権利擁護センター・社会福祉協議会・地域包括支援センター・医療連携室など、関連機関の方々からの相談もお待ちしております。→ 支援者の方へ

⑤ 後見制度を利用されている方、後見人等に就任されている方からの相談にも対応します
 当事務所では、既に成年後見制度を利用されている方や後見人等に就任されている方からの相談にも対応可能です。お気軽にお問い合わせください。
 なお、相談の際、後見人等に就任されている方からのご相談の場合は後見人等の権限を確認させていただく必要がありますので、後見等の登記事項証明書又は後見等開始の審判(+可能であれば確定証明書)をご持参ください。


弁護士費用等


 当事務所に成年後見等申立のご依頼いただいた場合の弁護士費用は以下のとおりです。

① 着手金
  以下の基準を参考に、事案の複雑さによって決定します。
  調査・検討すべき事項が少ない事案    22万円
  親族間紛争事案・虐待事案などの困難案件 44万円~66万円
  上記以外の事案(原則)         33万円

② 日当
  弁護士が事務所外で活動をしたときに発生します。出張場所に応じて設定します。
  東京都内(島しょ部を除く)・埼玉県・千葉県・神奈川県 1日あたり2万2000円
  群馬県・茨木県・栃木県                1日あたり3万3000円
  北海道・沖縄・離島・日本国外             応相談
  上記以外                       1日あたり5万5000円

③ 実費
  収入印紙代(数千円程度)・切手代(数千円程度)・診断書代(数千~数万円程度)・鑑定費用(必要な場合、5万~10万円程度)・交通費等の実費をご負担いただきます。

④ 報酬金
  原則として発生しません。

⑤ タイムチャージで申立支援等を行う場合
  原則、1時間あたり3万3000円。別途実費を請求させていただきます。

※ 法テラスの民事法律扶助制度を利用する場合の費用は上記と異なります(法テラスが決定する金額に従います。)。

※ 行政機関、権利擁護センター、成年後見中核機関等からのご依頼については、別途、協議をさせて頂きます。各機関がお持ちの規定等に合わせ、柔軟に対応させて頂きます。

※ 既に成年後見制度を利用されている方からのご相談や後見人等に就任されいてる方からのご相談は、通常の法律相談の際に適用される報酬基準で対応をさせて頂きます。詳しくはこちらをご覧ください。

Q
なぜ、弁護士費用(着手金)に幅があるのでしょうか?
A

一言でいうと、業務の量が異なるからです。

 ご本人、ご家族、関係者の方々など、調整が必要となる方の人数が少なく、また、事務所までお越しいただけるような場合には、弁護士の業務量が少なくなりますので、費用を抑えることができます。

 他方、多数の関係者との調整が必要なケースや出張が必要なケース(ご本人が入院中・施設入所中というケースがその典型です。)では、弁護士の業務量が増えるため、業務量に応じた費用を頂くことになります。

 また、親族間紛争事案や虐待事案では、ただ申立てを行うだけではなく、交渉も必要となりますし、事案によっては「審判前の保全処分」等の、本体の成年後見等申立事件以外の手続きをあわせて受任することとなります。このような事案では、弁護士の業務量が相当増えますので、その業務量に応じ、料金を設定させていただきます。
 特に虐待事案等については、受任後、早急に対応しなければならない事務が相当多くなります。他の業務等に優先して業務を行う必要があります。このような事案では、「特急料金」として、通常より高額な弁護士費用を頂くこととなります。

 このように、必要な作業量に応じ、費用を計算させていただいております。
 作業量の多さは多数の事案にかかわっている者でなければ分からない点もあるかと思いますので、まずはお問い合わせください。事案に応じて業務量を検討し、着手金の額を見積もらせていただきます。

よくある質問と回答 Q&A

Q. 高齢の方、障がいを持つ方の金銭管理、契約支援等について、どのような制度・サービスがあるのでしょうか?

A. 主に、以下のような制度があります。

① 成年後見制度(成年後見・保佐・補助)
② 任意後見制度(任意後見契約)
③ 民事信託(「家族信託」と呼ばれることもあります。)
④ 日常生活自立支援事業
⑤ 財産管理契約(財産管理委任契約)等

 以上のどの制度を利用するべきか(あるいは複数の制度を組み合わせて利用するか)は、目的、ご本人の状況などによって異なってきます。専門家にご相談いただければ、ご本人やご家族、支援者の方々などから事情をお伺いし、適切と考えられる制度・サービスをご案内させていただきます。

Q. 「成年後見制度」はどのような制度なのでしょうか?

A. 成年後見制度とは、認知症や知的障がい、精神障がいなどにより、物事を判断する能力が十分でない方の財産の管理や契約手続の支援などを行うことにより、そのような方の権利を守り、支援するための制度です。家庭裁判所によって選ばれた(成年)後見人・保佐人・補助人という方が、ご本人のために、不動産や預貯金などの財産を管理し、必要に応じ遺産分割などの必要な手続きを行い、介護サービス・施設入所・病院入院などの必要な契約を結び、書類の作成や費用の支払等の事務を代行します。また、ご本人が悪徳商法の被害にあっている場合などは、後見人・保佐人・補助人がその契約を取り消すなどします。このように、判断能力の不十分なご本人を守り、支援するのが成年後見制度です。

 以下、より詳しく説明をします。

 まず、成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。
 「法定後見制度」は、家庭裁判所が事案に応じ、ご本人のために適切な後見人・保佐人・補助人を選ぶ制度です。一方「任意後見制度」は、ご本人が元気(十分な判断能力を有している)うちに自身の(任意)後見人になってもらう方と契約を結んでおき、ご本人の判断能力が不十分になったときにその方に(任意)後見人に就任してもらう制度です。
 両制度一番大きな違いは、後見人等となる方を自分で選ぶか家庭裁判所が選ぶかという点にあります。また、後見人等の権限の範囲も任意後見制度の場合は契約で決める一方、法定後見制度の場合は法律で決まっているか、家庭裁判所が決めることになります。なお、どちらの制度を利用した場合も、後見人等の最終的な監督は家庭裁判所が行います。

法定後見制度任意後見制度
誰が後見人等を選ぶか家庭裁判所ご本人
後見人等の権限の範囲法律で決まっている(後見・保佐)
家庭裁判所が決める(保佐・補助)
ご本人と任意後見人との任意後見契約で決める
(ただし、同意権・取消権は設定できない)
後見人等選任の方法家庭裁判所に申し立てる① 本人の判断能力があるうちに任意後見契約を締結する
② 本人の判断能力が不十分になったら家庭裁判所に後見監督人選任の申立てを行う
家庭裁判所の監督あるある
後見等監督人選任される場合と選任されない場合がある(家庭裁判所が決める)必ず選任される(任意後見監督人の報酬も発生する)
後見人等の報酬家庭裁判所が決める任意後見契約で決める

 次に、「法定後見制度」には「後見」「保佐」「補助」の3つの段階があり、それぞれ「後見人」、「保佐人」、「補助人」という方が本人のために就任します。後見人、保佐人、補助人の権限は、それぞれ法律で決まっており、後見人の権限が最も広く、保佐人が中間で、補助人が小さいということになっています。後見は、自分自身ではほとんど何も判断することができない方のための制度である一方、補助は、「ご本人が自分自身で判断することもできないことはないが、一定の支援が必要な方」のための制度となっています。保佐はその中間の方のためにある制度です。
 後見・保佐・補助のどの制度を利用するかは、ご本人の能力の状況に応じ、家庭裁判所が決めます。また、ご本人の能力に変化がある場合は、類型が変更される場合もあります。なお、本人の能力が回復した場合を除き、一度後見等が開始されると(対応すべき課題等が終了したとしても)後見等が終了することはありません。

後見保佐補助
対象者判断能力を常に欠いている方判断能力が著しく不十分な方判断能力が不十分な方
本人を保護する方の名称(成年)後見人保佐人補助人
後見人等の権限財産管理・法律行為の全般について取消権・代理権を持つ民法に定められた範囲の同意権・取消権と家庭裁判所が定めた範囲内の同意権・取消権・代理権を持つ家庭裁判所が定めた範囲内でのみ同意権・取消権・代理権を持つ
申立時の本人の同意不要必要必要
本人の資格制度を利用しただけでは失わない制度を利用しただけでは失わない制度を利用しただけでは失わない

 後見人等の業務内容など、詳しい情報はそれぞれのQAをご覧ください。

Q. 「任意後見制度」、「民事信託」(家族信託)、「日常生活自立支援事業」、「財産管理契約」などの制度は、それぞれどのようなものなのでしょうか?

A. それぞれの制度について簡単に説明をさせて頂きます。

① 任意後見制度
 本人が元気な(十分に判断能力を有している)間に、将来のために、自身の財産の管理などをお願いする人(任意後見人)との間で契約を結んでおき、本人の判断能力が不十分となった後、契約に従い任意後見人が本人のために契約に定められた業務を行うという制度です。法廷後見制度と異なり、だれを後見人にするか、どのような業務をお願いするかは、本人が契約により決めることが可能です。また、法廷後見制度同様、家庭裁判所(及び後見監督人)の監督が入ることも特徴です。
 なお、契約は必ず公正証書で締結しなければならないこと、契約の効力を生じさせるために家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立をしなければならないこと、契約の効力発生後は必ず任意後見監督人が選任される(報告義務や監督人の報酬の問題が発生する)ことなど、利用のためには一定の手間や費用がかかります。

② 民事信託(家族信託)
 本人(委託者)が、自身の特定の財産を、信頼できる人(受託者)に預け、契約に定めた目的に従って管理、活用等をお願いするという制度です。誰が利益を受けるか(受益者)も契約によって定めることができます。信託の内容は契約によって定めることになるため、成年後見制度と比べ、より柔軟に財産管理の内容を定めることができます。また、成年後見制度は財産を「守る」ことが主になりがちですが、信託では、財産を「運用」することを主目的とすることも可能です。
 一方で、民事信託の場合、成年後見制度のように、判断能力が不十分になった後に契約手続などを代行してもらうといったことはできません。また、成年後見制度のような裁判所による監督がないため、委託者自身で信頼のできる受託者を探す必要があります(信託契約等により信託監督人を設定することは可能です。)。ご家族など、近しい人に信頼のできる方がいらっしゃればよいのですが、そうでないと使うことは難しい制度となります。なお、法律上、原則として、弁護士などの専門職が、報酬を受けて信託を受けることはできません。
 なお、民事信託の契約書について、公正証書で作成しなければならないとの決まりはありません。ただ、実務上は、公正証書で作成することが多くなっています。

 民事信託と成年後見制度では、それぞれにメリット、デメリットがあります。事案によっては、民事信託と成年後見(又は任意後見)を併用することもあり得ます。「成年後見制度は使えない。利用すべきでない。民事信託を利用すべき。」という意見を見ることがありますが、必ずしもそうとはいえず、適切な使い分けが重要であると考えます。

③ 日常生活自立支援事業
 各地の社会福祉協議会が提供するサービスで、本人が、契約により、社会福祉協議会に預貯金の管理や定期訪問などの業務を委託するものです。社会福祉協議会との「契約」であるため、利用のためには「契約」を理解できるだけの能力が必要となります(判断能力が低下した場合には、法定後見制度などへの切り替えが必要となります。)。サービスの利用の可否は社会福祉協議会が判断することになっています(審査会などが設置されています。)ので、だれでも利用できるということではありません。
 利用の可否、業務の内容、利用料(1回の訪問につき1000円程度としているところが多いと思われます。)などについては、各市町村の社会福祉協議会にお問い合わせください。

④ 財産管理契約(財産管理委任契約)
 自身の財産を、契約により、預かってもらうものです。とくに定義が決まっているものではないため、法律に反しない限り、自由に契約内容を決めることができます。ただし、「契約」であるため、「契約」の内容を理解できるだけの判断能力が求められること、通常、監督者がいないため、不適切な管理が行われるリスクがそれなりにあることに注意をする必要があります。また、金融機関などの内規・運用によっては、財産管理契約を締結した第三者による預金の引出し等を認めないこともあります。
 なお、民事信託同様、財産管理の契約書は、法律上、公正証書作成しなければならないとの決まりはありませんが、実務上は公正証書で作成するケースが多くなっています。

 以上のように、それぞれの制度は、重なり合う部分もありますが、異なっている部分も多くあります。目的に応じ、適切な制度を使い分けることが重要です。また、目的によっては、複数の制度を併用することもあり得ます。
 どの制度をどのように利用することが適切か、専門家への相談をお勧めします。

Q. 「法定後見制度」「任意後見制度」「民事信託」の違いは何ですか?それぞれ、どのような場面で使うことが想定されているのでしょうか?

A. それぞれの制度には、以下のような違いがあります。

法定後見制度任意後見制度民事信託
法律民法任意後見契約に関する法律信託法
身上監護×
財産管理
資産承継××
資産運用
対象となる財産全ての財産契約で選ぶことができる契約で選ぶことができる
財産の管理者を原則、選ぶことができないご本人が選ぶことができるご本人が選ぶことができる
財産の管理者の資格家庭裁判所が決める原則、誰でもよい原則、家族・親族などに限られる
財産の管理者の報酬家庭裁判所が決める契約で決める(+監督人報酬)原則、無報酬
制度利用時の本人の能力能力を失っていても使うことができる契約時に契約を締結する能力が必要契約時に契約を締結する能力が必要
本人が死亡した場合終了する終了する契約で決めることができる
裁判所の関与ありあり原則、なし
公正証書不要必須必須ではないが、推奨

 以下、後見制度(法定後見制度・任意後見制度)と民事信託の大きな違いを説明していきます。
 なお、法定後見と任意後見の違いは、「Q. 「成年後見制度」はどのような制度なのでしょうか?」などをご覧ください。

① 資産の運用
 後見制度は、法定後見の場合も、任意後見の場合も、家庭裁判所による監督が入ります。家庭裁判所は、ご本人を守ることを第一に考えますので、通常、リスクの高い資産運用には、消極的な立場をとります。そのため、法定後見・任意後見では、資産運用を全くできないわけではありませんが、消極的にならざるを得ない部分があります。また、後見人等が選任される前から行われていた節税対策などについても、後見人選任後に続けることができるかは、家庭裁判所や後見人等・後見監督人の判断によるため、不確定となります。
 一方、民事信託では、契約によって資産の運用などについて、原則として自由に決めることができるため、リスクのある資産運用も選択することが可能です。また、節税対策も、(違法とならない範囲であれば)自由にすることができます。
 このように、(特にリスクのある)資産運用や節税対策を考えるのであれば、後見制度ではなく、民事信託を選択することが多くなります。

② 資産承継
 法定後見・任意後見は、ご本人が亡くなられた時点で終了します。財産の承継のためには、別途、遺言を作成しておく必要があります。
 一方、民事信託では、「ご本人が亡くなっても契約の効力が失われない」とすることが可能です。また、遺言は、ご本人が亡くなるまで効力は発生しませんが、民事信託であれば、ご本人の生前から亡くなった後まで、一貫した資産承継をすることが可能です。

③ 身上監護
 法定後見・任意後見は、財産の管理以外に、ご本人の住居の確保、施設への入退所、介護に関する契約の締結、医療に関する契約の締結など、ご本人の生活に関する事務も行うことができます(これを「身上監護」と呼びます。)。一方、民事信託は、あくまで財産の管理・運用・処分のための制度なので、身上監護に関する事項を定めることはできません。民事信託を利用する場合で、身上監護も必要とする場合は、別途、任意後見契約を締結しておく必要があります。

④ 監督
 法定後見・任意後見の場合、家庭裁判所による後見人等への監督があります。(残念ながら後見人等による横領事案も発生していますが)安全性は、比較的高いといえます。一方、民事信託については、監督はありません。信託契約において信託監督人(弁護士・司法書士などの専門職を選択することが多いと思いますが、制限はありません。)を選任することは可能ですが、家庭裁判所による監督のような強い監督をすることは難しいのが現状です。

⑤ その他
 身元保証、医療同意、結婚・離婚などの身分行為、介護などの事実行為については、後見制度(法定後見・任意後見)でも民事信託でも対応することはできません。

 以上のように、後見制度(法定後見・任意後見)と民事信託は、どちらがより優れた制度であるという関係にはありません。何を目的にするかで、利用すべき制度は異なってきます。また、事案によっては、制度を併用することも必要となります。
 具体的な事案でどの制度を利用すべきかという判断については、専門家とよくご相談されることをお勧めします。

Q. すでに本人の能力が低下しているのですが、今から「民事信託」や「財産管理契約」を利用することはできますか?また、「任意後見契約」を結ぶことはできますか?

A. 「民事信託」「財産管理契約」「日常生活自立支援事業」「任意後見契約」はいずれも「契約」です。これらの契約を成立させるためには、ご本人に契約を理解することのできる能力がなければなりません。ご本人の能力が一定程度低下していたとしても契約の内容を理解できる能力が残っていれば契約を結ぶことはできますが、複雑な契約を結ぶことは難しいかもしれません。ある契約を結ぶことができるかどうかは、ご本人の能力と契約内容の複雑さから、個別に検討するしかありません。なお、「日常生活自立支援事業」は社会福祉協議会がサービス利用の可否を判断することとなりますので、同協議会が設けた基準に従って判断されることとなります。

 具体的にどの程度の能力が必要とされるかは、ご本人の能力や契約の複雑さによって異なってきます。具体的には、ご本人について、
 ・ 自分自身のどの財産の管理を任すのか、認識できているか
 ・ 誰がその財産を管理することになるか、わかっているか
 ・ その財産の管理を任せることにより、誰にどのような利益が生まれるか、わかっているか
 ・ (特に信託について)自身が亡くなったとき、その財産を誰が承継することになるか、わかっているか
 ・ (特に信託で、リスクのある契約をする場合には)財産の価値が下がるなどのリスクがあることを認識できているか
といった点が問題になります。
 これらの事情について、
 ・ 契約作成時のご本人の言動
 ・ 医者(可能であれば主治医)の診断書・カルテ
 ・ 認知症のテスト(長谷川式簡易スケール・MMSEなど)の点数
 ・ 介護認定の程度、介護記録
 ・ 公証人との面談の状況
などから判断をしていくことになります。これらの判断は、ケースバイケースでしていくほかありません。

 なお、すでにご本人の能力が相当程度低下しており、任意後見制度・民事信託・日常生活自立支援事業などの利用が困難な場合には、法定後見制度を利用するほかありません。
 法定後見制度を利用する場合も、ご本人が制度の意味を理解できる状態であれば、ご本人が自ら、自分自身のために成年後見等の申立てを行うことができますが、これも難しい場合、第三者(ご家族や市町村長等)による申し立てを選択しなければならなくなります。

Q. 後見人(・保佐人・補助人)はどのような仕事をするのでしょうか?

A. 後見人等の業務は、①財産管理と②身上監護の2つとされています。

 ①財産管理は、その名のとおり本人のために本人の財産を管理する業務ですが、「本人の相続人のために財産を残しておく」ことを目的とするのではなく、「本人のために本人の財産を適切に利用する」ことを目的とする財産管理であることが特徴です。本人の意思(本人の状態によっては意思を推定することもあります。)に基づき、本人のために、適切に財産を管理、利用することが求められます。また、事案によっては、遺産分割や債務整理など、本人が抱える課題を解決することも後見人等の業務となります。

 ②身上監護は、本人のために、適切なサービスの契約等をし、本人の生活を守るという業務です。在宅の方であれば自宅の賃貸借契約、公共サービスの契約、ヘルパーの契約など必要な契約を行い、これらの支払いの手続きを行うこと、入院・入所中の方であれば、入院・入所等の契約を行い、これらの支払いを行うこと、また、年金の申請や介護保険の利用など、適切なサービスの申請を行うこと等が主な業務をなります。他方、後見人等が、直接、本人を介護することはありません。
 なお、裁判所は、「身上配慮義務は、成年後見人の権限等に照らすと、成年後見人が契約等の法律行為を行う際に成年被後見人の身上について配慮すべきことを求めるものであって、成年後見人に対し事実行為として成年被後見人の現実の介護を行うことや成年被後見人の行動を監督することを求めるものと解することはできない」と説明しています(最高裁判所平成28年3月1日判決)。

 他方、後見人等ができない業務として、上述の事実行為(本人の介護など)の他、本人の(連帯)保証人・身元引受人になること、本人の医療の同意をすること、(例外はありますが)本人死亡後の事務を行うこと、などがあげられます。れらの「できないこと」について、ご家族や支援者の方々が誤解されているケースを時々見ますので、注意が必要です。
 なお、例えば、本人死亡後の事務については、別途、死後事務委任契約を結ぶことで対応できるなど、他の制度、契約等を併用することで後見人等が業務を行うことができないという問題を回避することができる場合もあります。専門家に相談をされる際に「課題は何か」教えて頂ければ解決する方法を提示させていただくことができるかもしれません。

 後見人等選任後に期待していた職務を行ってもらうことができないという事態を避け、必要なサービスを受けることができるようにするためにも、後見等申立を行う前に専門家に相談をし、その手続きがご本人が抱えている課題の解決につながるのか、確認されることをお勧めします。

Q. 後見人(・保佐人・補助人)の「同意権」「取消権」「代理権」とはどのような制度なのでしょうか?

A. 成年後見制度の利用が開始されると、成年後見人・保佐人・補助人に「同意権」「代理人」が付与されることがあります。それぞれの権利の内容は、以下のとおりです。

① 同意権
 同意権とは、ご本人が契約などの法律行為をするときに、保佐人・補助人が「それをしてもいいですよ」と同意をする権利です。保佐人・補助人の同意を得なければならない法律行為を、ご本人が、保佐人・補助人の同意を得ずにした場合、保佐人・補助人は、その法律行為を取り消すことができます(これを「取消権」といいます。民法13条、同法17条1項)。また、ご本人も、保佐人・補助人の同意を得ていない場合には、取消権を使うことができます。

 後見類型の場合、ご本人が自分自身で法律行為をすることは想定されていないため、後見人がご本人の法律行為に同意をするということはありません。成年後見人は、ご本人がした法律行為全般を取り消すことができます。ただし、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」については、取消しの対象外とされています(民法9条)。

任意後見契約に基づいて就任する任意後見人には「同意権」「取消権」はありません。任意後見契約は、その効力が発生しても、本人の能力は制限されることがありません。
なお、任意後見人は、任意後見契約の中で定めた範囲内の代理権を持っています。

 保佐人は、民法13条1項記載の重要な行為と家庭裁判所が定めた行為について同意権・取消権を持っています。
 民法13条1項記載の重要な行為は、以下のとおりです。

1 元本を領収し、又は利用すること。
2 借財又は保証をすること。
3 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
4 訴訟行為をすること。
5 贈与、和解又は仲裁合意(中略)をすること。
6 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
7 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
8 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
9 民法602条に定める期間を超える賃貸借をすること。

 保佐の場合、家庭裁判所の決定により、以上の行為以外に同意権・取消権を設定することもできます。この追加の同意権・取消権を設定するという決定をするためには、ご本人の同意が必要です。

 補助人は、家庭裁判所が特に定めた場合に限り、同意権・取消権を持っています。ただし、同意権・取消権を設定できる行為は、民法13条1項に書かれている行為(上記の行為)のうちの一部に限られます。補助の場合、民法13条1項に書かれている行為以外について同意権・取消権を設定することはできません。また、同意見・取消権を設定するためには、ご本人の同意が必要です。
 なお、補助人は、同意権・取消権を持たないこともあります。

② 代理権
 代理権とは、ご本人の代わりに、ご本人のために、法律行為をしてあげることができるという権利です。

 後見人の場合、全ての行為について包括的な代理権を持っています(民法859条1項)。後見の場合、当然に権利を持っていることとされており、ご本人の同意がなくても代理権を持つことになります。

 保佐人・補助人の場合、家庭裁判所が定めた特定の行為について代理権が認められます(民法876条の4第1項、同法876条の9第1項)。保佐・補助の場合、代理権を設定するためには、ご本人の同意が必要です。
 保佐人、補助人については、代理権を持っていないこともあります。

 任意後見人は、任意後見契約において定められた範囲の代理権を持ちます。任意後見契約において代理権を定めることのできる事務は、ご本人の生活、ご本人の療養看護、ご本人の財産管理に関する事務のうちの、全部または一部とされています。

 以上を表にすると、以下のようになります。

後見人保佐人補助人任意後見人
同意権の範囲同意権はない
(本人が法律行為をすることは想定されていない)
民法13条1項記載の行為
+ 家庭裁判所が指定した行為
家庭裁判所が指定した行為
(同意権を持たない場合もある)
ない
取消権の範囲「日常生活に関する行為」のみ取り消すことができない。
その他の行為は取り消すことができる
民法13条1項記載の行為
+ 家庭裁判所が指定した行為
家庭裁判所が指定した行為
(同意権がない場合は取消権もない)
ない
代理権の範囲原則、全て(包括代理権)家庭裁判所が指定した範囲
(代理権を持たない場合もある)
家庭裁判所が指定した範囲
(代理権を持たない場合もある)
任意後見契約で定めた範囲の代理権を持つ

 以上のように、後見人・保佐人・補助人には、それぞれ制度によって範囲は異なりますが、同意権・取消権・代理権という、強い権限が与えられています。ただし、これらの権利は、後見人等が、何でも、好き勝手に、自由に使うことができるわけではありません。

 まず、以下の行為について後見人・保佐人・補助人が代理権を行使しようとする場合には、その代理権について一定の制限を受けます。
 ・ ご本人の居住用不動産を処分(売却など)する場合には、家庭裁判所の許可を得なければならない(民法859条の3など)
 ・ ご本人と後見人等の利害が相反する行為をする場合には、家庭裁判所に特別代理人を選んでもらわなければならない(民法860条・826条)
 ・ 後見等監督人が選任されている場合には、一定の重要な行為をする場合、後見監督人の同意を得なければならない(民法864条・865条)

 また、後見人・保佐人・補助人が同意権・取消権・代理権を行使する際には、ご本人の意思を尊重し、ご本人のおかれている状況に配慮をして行使をしなければなりません。民法は「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。」と定めています(民法858条)。後見人等は、強い権限を持っているからといって、その権限を濫用してはいけません。

Q. 後見人(・保佐人・補助人)が本人の意思を無視して活動をすることはないのでしょうか?

A. 近年、成年後見実務ではご本人の「意思決定支援」を重視するようになってきています。

 「意思決定支援」とは、「意思決定に困難を抱える人が、日常生活や社会生活等に関して自分自身がしたい(と思う)意思が反映された生活を送ることが可能となるように、その人を支援することやその仕組み」ととされています。保佐や補助相当の方であれば、一定程度、ご自身の希望を伝えることができる能力をお持ちのはずですし、後見相当の方であっても、コミュニケーションの方法を工夫すれば意思を確認することが可能な方もいらっしゃいます。また、意思表示が困難な方であっても、過去の生活歴等から、ご本人の希望をなるべく推測することが求められます。後見人等に就任した方には、ご本人が自らの意思に基づいて生活を送ることができるよう、その意思決定をサポートすることが求められています。現在、厚生労働省の事業で後見人等候補者向けの意思決定支援研修が実施されており、多くの後見人等候補者が意思決定支援の方法を学んでいます。また、家庭裁判所も、後見人等に求める報告書に意思決定支援に関する項目を設けるなど、運用を変更しつつあります。このように、本人に代わって意思決定を行うという「代行決定」から、本人の意思を尊重し、その意思決定を支援する「意思決定支援」へ、後見の実務は変わりつつあります。

 以上のように、現在の後見実務は、ご本人の意思を尊重する方向に動いています。もちろん、個々の後見人等によって差はあるかと思いますが、後見人等が本人の意思を完全に無視して活動するということは少なくなっているのではないかと思います。

 なお、後見人等はご本人の利益のために活動をします。後見人等は、ご本人のご家族の利益ために活動する者ではありません。「家族の希望を聞いてもらえない」というご不満を持たれる方もいらっしゃるかと思います。しかしながら、後見人等は「ご本人が望まれているか。ご本人に利益があるか。」という観点から判断を行うことになります。必ずしもご家族の希望される方針で動くわけではないということをご了解いただければと思います。

Q. 後見人(・保佐人・補助人)が選任された場合、本人の選挙権は失われるのでしょうか?運転免許は失効するのでしょうか?そのほかの資格はどうなりますか?

A. 法律の改正があり、成年後見・保佐・補助が開始された(後見人・保佐人・補助人がついた)としても、自動的にご本人の各種資格が停止されるということはありません。

 まず、選挙権については、成年後見制度の利用開始後も、ご本人が選挙権を持ちます。後見人等が本人に代わって選挙権を行使することはできません。ご本人が選挙の会場に行くために介護タクシーを予約するなどの業務は後見人等が行うこともできますが、実際に選挙権を行使する場面では後見人等がご本人のお手伝いをすることはできません。

 次に、運転免許についてですが、こちらも、成年後見制度を利用することで免許が更新できなくなるといったことはありません。運転免許の更新が可能かどうかは、免許の更新の際に行われる認知機能検査などの結果によって決まることになります。

 その他の資格について、以前は、「補助」を除く成年後見制度を利用した時点で、法律上、会社役員、医師、弁護士、税理士などの資格を失うことになっていました(「欠格条項」と言われていました。)。しかしながら、令和元年(2019年)6月に各法律が改正され、このような「欠格条項」は廃止されることになりました。今後は、「成年後見制度を利用しているかではなく、ご本人の能力に応じて資格の保持を認めるかを個別に決めるべき」ということになります。例えば、弁護士の場合、以前は成年後見制度を利用したらその時点で自動的に弁護士の資格を失っていたのですが、現在は、弁護士会がご本人の状況を個別に審査し、「業務を続けることが相当でない」と判断した場合には、資格を取り消すという対応が行われるようになっています。

Q. 本人は施設に入所(あるいは病院に入院)しており、収入・支出とも全て銀行振込なので、後見人が行うべき業務はないと思います。それでも後見人は必要なのでしょうか?

A. 民法の規定のお話をすると、既に判断能力を完全に失っている方は契約をすることができません(民法3条の2)し、判断能力が不十分な方の契約は後に取り消されることがあります(民法9条、13条4項、17条4項)。もし、ご本人と施設が利用契約を結んでいる、あるいはご本人と病院が入院契約を結んでいる場合、それらの契約は、無効となったり取り消しの対象となったりしてしまいます。判断能力を失っている/不十分なご本人と施設や病院が契約を結ぶためには、ご本人の法定代理人である後見人等が必要となります。

 ただし、現実には、ご家族が施設・病院と契約を結ぶなどの方法により、対応ができているケースも多いかと思います。成年後見人(保佐人・補助人)の選任が必要となるかは、事案に応じて検討する他ありません。具体的な事情を踏まえ、専門家と検討されることをお勧めします。

Q. 私は本人の子です。いつも通り銀行で本人の預金口座からお金を引き出そうとしたところ、銀行から「成年後見制度を利用しなければ取引に応じない」と言われてしまいました。今後は成年後見制度を利用しなければならないのでしょうか?

A. 判断能力を完全に失っている方がした契約は無効です(民法3条の2)し、判断能力が不十分な方が結んだ契約は取り消されることがあり得ます(民法9条、13条4項、17条4項)。金融機関側としては、契約が無効になったり取り消されたりするリスクを避けるため、無効・取り消しのリスクのある契約は拒否するという運用になっています。
 さらに、近年、各銀行が本人確認を厳格に行うよう運用を変更しており、たとえ親族であっても、本人以外の者による取引を拒否するようになってきていますす。本人が、まだ自分の意思を示すことができ、委任状を作成できる能力を持っていれば、(手間ではありますが)毎回委任状を作成し、ご家族らに取引を委任することで対応することはできます。しかしながら、ご本人の意思の確認ができなくなった後は、そのような方法をとることはできません。委任状を作成したとしてもその委任状は無効ですし、事情によっては窃盗罪などの犯罪行為となることもありますのでご注意ください。ご本人が判断能力を失っている場合、成年後見制度を利用しなければ、ご本人の口座から預貯金を引き出すなどの取引はできなくなってしまいます。

 後述のQAにも記載していますが、成年後見等申立ての手続きの準備を開始してから、成年後見制度の利用が始まるまで数か月から半年程度の時間が必要になります。ぜひ、ご本人が能力を失う前に専門家にご相談いただき、早めに必要な準備を進めて頂ければと考えています。

Q. 本人は精神の障がい/知的障がいにより自分の意思を示すことができません。この度、本人の親が亡くなり、遺産分割の必要が生じました。本人には、法定相続分に応じた預貯金を渡す予定です。このような場合も成年後見人の選任は必要なのでしょうか?

A. 成年後見人(保佐人・補助人)が必要になるかどうかは、ご本人の能力によって決まります。ご本人が自分の意思を示すことができない状態となっている場合、遺産分割の結果がご本人の利益になるか否かを問わず、遺産分割を行うためには本人について成年後見人(又は保佐人・補助人)の選任が必要となります。判断能力を失っているご本人の参加した遺産分割協議は無効となりますし、判断能力が不十分なご本人が参加した遺産分割協議は取り消されることがあります。また、そのような状況では、不動産の移転登記等の手続も進めることができなくなりますのでご注意ください。

Q. 誰が後見人(・保佐人・補助人)に就任するのでしょうか?

A. 法律上、後見人等になることのできる資格というものは定められていません。そのため、どなたでも後見人等に就任することはできますが、法定後見制度を利用する場合、実務上は、本人の親族、専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士など)、社会福祉協議会などの法人後見人、専門の研修を受けた市民後見人のいずれかが後見人等に選任されることがほとんどです。

 一般的には、以下のように運用されているといわれます。

① 解決すべき課題がない/少ないケースで、かつ、親族内に適切な後見人等候補者があるケース → 親族後見人
② 解決すべき課題はない/少ないが、親族内に適切な後見人等候補者がいない/身寄りがないケース → 社会福祉士などの福祉専門職・社会福祉協議会などの法人後見人・市民後見人
③ 解決すべき法的課題があるケース、親族間に対立のあるケース → 弁護士や司法書士などの法律専門職

 もっとも、ケースにより、家庭裁判所の判断は異なってきます。解決すべき法的課題があるものの後見人等には社会福祉士を選任し、法的問題については後見人等に就任した社会福祉士から弁護士等に委任するという方法をとるケースなども存在します。

 なお、最近の家庭裁判所の運用では、親族の後見人の割合が減少し、専門職が後見人に選任されるケースが増えています。最近では、7割以上のケースで専門職の後見人が選任されています。また、地域によって差はありますが、社会福祉協議会などによる法人後見や市民後見が増えつつあります。

 最終的に誰を後見人等に選任するかは家庭裁判所が決めるため、各家庭裁判所の運用や申立ての内容、時期によって判断は異なってきます。誰が後見人等に就任するかは、後見等の開始決定が出るまでわかりません。そして、「誰を後見人等に選任するか」という点については不服申し立てをすることができません。「この人に後見人等をお願いしたい」という希望がある場合には、判断能力が低下する前に任意後見契約を結んでおくなど対応が必要となります。

Q. 後見人(・保佐人・補助人)の報酬はどのようになっているのでしょうか?

A. 後見人等の報酬は、家庭裁判所が決定し、本人の資産の中から支払われます。後見人等が、裁判所の許可なく、本人から報酬を得ることはありません。家庭裁判所の決定がないのにもかかわらず報酬を受領した場合、業務上横領罪となります(親族後見人による横領のケースでも業務上横領罪は成立します。親族であることをもって処罰を免除されることはありません。最高裁判所平成24年10月9日判決。)。申立人と本人が異なる場合、申立人が後見人等の報酬を支払うことはありません。

 家庭裁判所がどのように報酬を決定するかについては、裁判所によって基準を公表している裁判所とそうでない裁判所があります。現在の運用は、後見人等が管理する本人の資産の多さによって報酬を定めることが一般的です。なお、家庭裁判所によっては「成年後見人等の報酬のめやす」を公表している裁判所もあります。裁判所ウェブサイトに掲載されている場合もあります(例えば東京家庭裁判所はウェブサイトにめやすを公表しています。)ので、必要に応じてご参照ください。

 ただし、今後、報酬の基準は変更される可能性があります。上記のとおり、これまでは、家庭裁判所は、主に、本人の資産の額に応じて報酬を決めてきました。しかしながら、このような報酬の決め方では、後見人等の仕事量と報酬の額が比例しないとの批判がありました。そこで、後見人等の仕事内容に応じた報酬を決定する方向で、最高裁判所を中心に報酬基準の改定作業が進められています。ただし、現時点では基準や運用は定まっておらず、報酬を予想することは難しい状況にあります。

 なお、後見人等が業務を行うにあたり必要となる費用(実費)も本人の負担となります。後見等業務によって発生した費用は、後見人等が本人の財産の中から精算を行います(適切に清算が行われているかは、裁判所の監督を受けることとなります。)。

Q. 後見人(・保佐人・補助人)による横領というニュースを聞いたことがあります。成年後見制度は安全な制度なのでしょうか?

A. 残念ながら、後見人等による不祥事がありえないとは言い切れません。ただし、不祥事に関する報道が過熱する一方で、家庭裁判所の統計によると、不祥事の件数、被害額は、年々減少傾向にあります。家庭裁判所や弁護士会・司法書士会(リーガルサポート)・社会福祉士会(ぱあとなあ)は、それぞれ不祥事対策に力を入れており、その監督は年々厳しくなっています。監督機関のない/少ない制度に比べて安全性は高いと考えます。
 なお、既に後見人等が選任されているケースで、横領などが疑われる場合には、速やかに後見人等を監督している家庭裁判所(通常、ご本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。)に相談されることをお勧めします。

Q. 後見人(・保佐人・補助人)の選任をお願いしたいと考えています。誰が手続きを申し込むことができるのでしょうか。

A. 民法上、4親等以内の親族が申立人になることができます。本人の配偶者、父母、子、兄弟姉妹、おじ・おば、いとこなどが4親等以内の親族にあたります。本人が自分自身で申し立てることもできます(本人が全く意思を表示できないような場合は除きます。)。
 なお、最近では、特に高齢者・障がい者虐待が疑われているようなケースで市町村長が申立人となるケースも増えています。

Q. 成年後見(・保佐・補助)の申立てを検討しています。気を付けるべきことはありますか。

A. 特に問題になることが多いものは以下のとおりです。これらについては、申立て前に、最低限、ご理解いただきたいと思います。

① 成年後見等の申立書に候補者を記載していたとしても、その候補者が必ず後見人等に選任されるわけではありません。候補者とは別の方が後見人等に選任されることもあります。弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職が後見人等に選任された場合には、通常、後見人等の報酬が発生します。専門職が後見人等に選任される(=後見人等の報酬が発生する)可能性は常にあります。また、候補者が成年後見人等に就任した場合であっても、別途、後見監督人が選任されることもあります。後見監督人が選任された場合、後見監督人の報酬が必要となります。

② 家庭裁判所に成年後見等の申立書を提出した後は、家庭裁判所の許可がある場合を除き、申立てを取り止めることはできません。申立書を提出した後は、成年後見制度の利用がご本人の利益にならないなどの特別の事情がある場合を除き、成年後見制度の利用を取り止めることはできません。

③ ご本人の能力が回復するなど特別の事情がない限り、ご本人が亡くなられるまで成年後見制度の利用が続くことになります。遺産分割、不動産の売却など、特定の目的のために成年後見等の申立てを行った場合であっても、その目的を達成したとしても成年後見制度の利用が終了するわけではありません。

④ 成年後見人・保佐人・補助人は何でもしてくれるわけではありません。成年後見人等の職務内容は法律と家庭裁判所の審判で決まっており、権限の範囲外の活動はできません。後見人等が就任したからといってすべての課題が解決するわけではありません。

⑤ 特に保佐・補助については、ご本人の意向に反して保佐・補助を開始することはできません。また、後見人・保佐人・補助人は、本人の利益のために、本人の意思を尊重して活動することになります。後見人等はご家族や支援者の方のために活動をするわけではありません。後見人等が、ご本人の意思に反し、ご本人を施設に入所させる等の活動をすることもできません。

Q. 後見人(・保佐人・補助人)を選ぶことはできますか?候補者がいないまま申し立ててもよいのでしょうか?

A. 後見等の申立の際には候補者を立てて申し立てをすることもできますし、候補者なしで申立てをすることもできます。また、候補者として、特定の専門職を希望することも可能です。弁護士、司法書士、社会福祉士など職種を希望する場合と、特定の個人を指定する場合の両方がありえます。また、男性が良い・女性が良い等の希望を述べることも可能です。

 ただし、誰を後見人等に選任するかは家庭裁判所が決めることとなります「親族の方を候補者として申し立てたが、裁判所が弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職を選んだ」というケースは多くあります。このような場合に「成年後見等の申立てを取り止めたい」ということはできませんので、注意が必要です。また、「誰を後見人等に選任するか」という家庭裁判所の判断に対しては不服申立て(即時抗告)をすることはできません。家庭裁判所の決定が絶対ということになります。特に親族の方を候補者として成年後見等の申立てを行う場合、「家庭裁判所が候補者の方を後見人に選ぶとは限らない」ということを十分にご理解の上、申立てをお願いすることになります(この点は、申立代理人の腕で何とかなるという問題ではありません。)。
 また、家庭裁判所が、「候補者の方を後見人等に選任するが、専門職の後見監督人を選任する」というケースもあります。この場合も「後見監督人が選ばれるのであれば成年後見等の申立てを取り止めたい」ということができないので注意が必要です。なお、後見監督人が選任された場合、後見監督人の報酬が発生します。

 以上のとおり、後見等申立にあたり「後見人等の候補者を立てることはできるものの、その候補者が後見人等に選任されるかはわからない。また、後見監督人が選任されるかどうかもわからない。」ことを十分にご理解いただく必要があります。特にご親族の方による申し立ての場合、希望通りにいかなかったとして後々トラブルになることが多いため、ご注意ください。

 なお、あらかじめ任意後見契約を締結すれば自身の後見人となる方を選ぶことができます。しかし、この場合も、①任意後見人が後見人に就任する際、必ず後見監督人が選任される(=後見監督人の報酬が発生する)こと、②任意後見人が不正な行為をするなど、任意後見の任務に適さない事情がある場合は、家庭裁判所により任意後見人が解任されることがありうること(任意後見契約に関する法律8条)、③任意後見契約が締結されている場合であっても、家庭裁判所は、「本人の利益のために特に必要」と認めた場合には(法定)後見等開始の審判をし、任意後見人候補者とは異なる後見人等が選任される可能性があること(同法10条1項)に注意が必要です。

Q. 私は本人の子ですが、親のために成年後見の申し立てを行い、私が後見人に就任しようと考えていました。しかしながら、裁判所は後見人は弁護士が適切と言っています。私が後見人に就任できないのであれば成年後見制度の利用を取り止めたいです。そのようなことは可能でしょうか?

A. 家庭裁判所に成年後見・保佐・補助の申立書を提出した後は、家庭裁判所の許可がなければその申立てを止めることはできません。家庭裁判所は「成年後見等の申立てを取り止めることがご本人の利益にかなうか」という視点で許可を出すかを決めますので、「候補者が後見人等に選任されない」という理由での申立ての取り下げは、許可される可能性が低いといえます。このことは、成年後見等の申立ての前に十分にご理解いただく必要があります。

 また、「誰を後見人・保佐人・補助人に選任するか」についての家庭裁判所の判断に対しては、不服申し立てをすることができないとされています。

Q. 成年後見(・保佐・補助)申立ての手続きの流れを教えてください。

A. 成年後見等申立の大まかな流れは、

① 申立書作成・資料収集 → 家庭裁判所に提出
② 家庭裁判所による審査
③ 後見人等の選任

となります。
以下、詳しく説明します。

① 申立書作成・資料収集
 成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所に後見(等)開始の申立てをする必要があります。
 申立書を作成し、添付資料を集め、家庭裁判所にそれらの書類を提出することにより、申立てを行います。
 提出先は、ご本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

 申立書の書式や集めるべき資料についての案内は、家庭裁判所の窓口で受け取ることができます。また、家庭裁判所のウェブサイトにも掲載されています。裁判所が作成をした「成年後見・保佐・補助申立ての手引」をお読みいただいて、申立ての準備をすることになります(版にもよりますが、この手引きは50ページくらいの分量があります。)。

 収集する資料は、おおむね、以下のとおりです。家庭裁判所の運用や事案によって、さらに追加の資料の収集・提出を求められることもあります。

収集する資料どこで取得するのか取得費用
ご本人の戸籍謄本(全部事項証明書)ご本人の本籍地数百円(+郵便代)
ご本人の住民票/戸籍の附表ご本人の住所地/本籍地数百円(+郵便代)
登記されていないことの証明書法務局(本局)の戸籍課
郵送の場合、東京法務局後見登録課
300円(+郵便代)
診断書(家庭裁判所書式)病院(可能であれば主治医)3000円~1万円程度
本人情報シートご本人の支援者(ケアマネなど)事案による
ご本人の相続人の戸籍謄本各相続人の本籍地
遠方の場合、郵送で取得することも可能
相続人の人数による
数百円~数万円程度(+郵便代)
障害者手帳などのコピーご本人
介護認定等に関する資料のコピーご本人
年金等、ご本人の収入額がわかる資料ご本人
ご本人の財産状況に関する資料
通帳のコピー・不動産登記事項証明書など
ご本人・銀行・法務局・保険会社など資料によって手数料が必要となる

 以上の各資料を収集し、これらを参照しながら、申立書を作成していくことになります。ご本人の財産目録や月間、年間の収支予定表、相続関係図などを作成する必要があります。

 必要な書類を集め、申立書を作成したら、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。なお、申立書を提出した後は、家庭裁判所の許可がない限り、申立てを取り止めることはできなくなりますので、ご注意ください。

 家庭裁判所に申立書を提出する際、手数料や切手を納める必要があります。具体的には、800円から2400円の手数料(収入印紙で支払います。手数料は、後見・保佐・補助のどの類型になるか、代理権と同意権をどうするかによって異なります。)、後見等登記手数料(2600円、こちらも収入印紙で支払います。)、郵便切手(3000円から5000円程度。家庭裁判所により必要な枚数が異なります。)などです。詳しくは「Q. 成年後見(・保佐・補助)申立てに要する費用はどれくらいでしょうか?誰が支払うのでしょうか?」をご覧ください。

② 家庭裁判所による審査
 以下、一般的な審査の流れをご説明します。
 なお、審査の方法について、運用が異なる家庭裁判所もあります。例えば、東京家庭裁判所本庁では、原則として申立書提出前に面接の予約が必要とされています。申立前に管轄家庭裁判所のウェブサイトをご覧になるか、問い合わせをされることをお勧めします。

 家庭裁判所は、申立書及び添付資料の提出を受けると、通常、まず、書類審査を行います。このとき、追加の資料が必要な場合は、家庭裁判所から指示があります。

 書類審査が終了すると、家庭裁判所の職員(家庭裁判所調査官や参与員)が、関係者の聞き取りを行います。
 申立てが保佐・補助類型の場合は、通常、家庭裁判所とご本人の面談が行われます。ご本人との面談は、ご本人が家庭裁判所に行くことができる場合は家庭裁判所で、ご本人が家庭裁判所に行くことができない場合は裁判所の職員がご本人宅や入院先・入所先施設などに出張します。
 申立類型が後見類型の場合は、家庭裁判所が本人と面談を行う場合と申立人等から事情を聴取するだけの場合があります。誰から事情聴取をするかは家庭裁判所が判断をします。
 また、家庭裁判所の判断により、申立人、申立代理人、後見人等候補者と家庭裁判所職員との面談を行うこともあります。
 加えて、事案によっては、家庭裁判所から親族に後見等を開始することや後見人等の候補者について、書面や電話で意見照会を行うこともあります。

 以上の審査を踏まえ、家庭裁判所は、「鑑定」を実施するか、決定します。
 ご本人が成年後見制度を利用すべき状態にあるのか、利用すべき場合に後見・保佐・補助のどの類型に該当するか等を決めるための精密検査のことを「鑑定」と呼びます。裁判所が鑑定を実施すると決定した場合、医師に支払う鑑定料として5~20万円程度の費用を申立人が家庭裁判所に納めることになります。鑑定の費用は、鑑定をを行う医師によって異なります。

 これらの調査結果を踏まえ、家庭裁判所が、後見・保佐・補助を開始するか、開始する場合どの類型にあたるか、保佐・補助の場合、保佐人・補助人の権限をどうするか、を決定します。

③ 後見人等の選任
 家庭裁判所は、後見・保佐・補助のいずれかを開始すべきと判断した場合、誰を後見人・保佐人・補助人に選任するか、選定する手続きに進みます。

 申立書に候補者が記載されており、家庭裁判所この候補者で問題はないと判断をした場合、候補者が後見人等に選任されます。
 候補者がいない場合や家庭裁判所が候補者とされている人が不適切だと判断した場合、家庭裁判所が後見人等に就任すべき人を探します。専門職団体への照会等が行われる場合もあり、時間がかかる場合もあります。

 後見人等が決定したら、家庭裁判所は、選任された後見人等、申立人、本人のそれぞれに「決定書」(「審判」と呼ばれます。)を郵送します。この決定書には「後見/保佐/補助を開始する」と「後見人/保佐人/補助人として〇〇を選任する」という内容が記載されています。

 後見人等が審判を受け取ってから2週間の間、利害関係を持っている方は不服申立てをすることができます。この不服申立ては「後見等の開始の必要性がないこと」を理由に行うものです。「誰を後見人に選任するか」という判断に対しては不服申し立てをすることはできません。
 2週間の不服申立ての期間が過ぎると、審判が「確定」します。この審判が確定したときから後見人等の職務が始まります。

④ 後見人等が選任された後
 審判確定後、選任された後見人等への財産の引継ぎを行います。通常、選任された後見人等から申立人や本人宛に連絡が来ますので、日程調整をして、顔合わせや財産の引継ぎを行うことになります。
 以降の流れは事案によって異なります。就任された後見人等と協議の上、必要な手続きを進めていくことになります。

Q. 成年後見(・保佐・補助)の申立てにはどれくらいの時間がかかりますか?

A. 事案によりますが、準備開始から成年後見人等の選任までに数か月から半年程度かかることが多いです。
 まず、収集すべき資料の多さにより、申立準備に要する時間が異なります。ご本人の相続人の人数が多い場合などは戸籍の取り寄せに時間がかかります。戸籍は、一つずつたどっていく必要がありますので、おい・めいが相続人になるようなケースなどでは、戸籍の取得に時間を要します。特に遠方の自治体に戸籍がある場合には、郵送等での取り寄せとなるため、時間(と費用)を要します。
 次に、申立書提出後は、裁判所の混雑具合によって処理のスピードが変わってきます。そして、一般的には、後見人等候補者があらかじめ決まっているケースのほうが処理は早いことが多いです。後見人等候補者がいない場合、弁護士会・司法書士会・社会福祉士会などの団体に後見人等の推薦依頼をしてその返答を待つという手続きが入るためです。

 なお、ご本人の財産を搾取している人がいるなど、緊急に後見人等を選任しなければならない事案もあります。このような事案では、審判前の保全処分という手続きを利用することにより、仮の後見人や財産管理人を選任することができます。この手続きを利用することにより、後見人等の選任の申立準備中に本人に不利益が及ぶことを防止することができます。また、事案によっては、行政による措置(やむを得ない措置)などで対応するケースもあります。保全処分が必要になるケースなどは対応が難しいため、できるだけ早く専門家に相談されることをお勧めします。

Q. 成年後見(・保佐・補助)申立てに要する費用はどれくらいでしょうか?誰が支払うのでしょうか?

A. 法定後見制度を利用する場合、後見申立てに要する費用は、おおむね、以下のとおりです。

項目費用備考
印紙代(裁判所に納める手数料)後見 3400円
保佐 4200円(例外あり)
補助 5000円(例外あり)
申立手数料+後見登記手数料の合計額。
保佐・補助申し立ての場合、代理権・同意権の付与申立の有無により費用が異なります。
切手代(裁判所に納めるもの)3000~5000円程度裁判所・類型により異なります。
戸籍・住民票・登記されていないことの証明書等の収集費用数千円~数万円収集しなければならない資料の量によって費用が異なります。
診断書作成料数千円~数万円程度医師・病院によって異なります。
鑑定費用 (精密検査の費用)5~20万円程度鑑定医によって異なります。鑑定を実施しない場合、不要です。
弁護士・司法書士費用弁護士・司法書士により異なる。
南池袋法律事務所の報酬基準はこちら
申立手続きを専門職に依頼する場合、必要となります。

 申立の代理を専門職に依頼をするか、鑑定が行われるかにより、費用が大きく変動します。また、診断書の作成費用や戸籍等の取り寄せについても、事案によっては、相当の費用(及び時間)が必要となることがあります。

 上記の申立てにかかる費用は、原則として、申立人が支払います。本人(被後見人等となる人)ではありません。
 例外として、申立費用の一部については、裁判所が「本人の負担とする」と判断する場合があり、この場合には、裁判所が指定した費用(裁判所へ予納をした収入印紙等の費用や鑑定料など)について、本人から支払いを受けることになります。実際には、申立ての時点では申立人が裁判所に支払いをしておいて(「予納」といいます。)、裁判所の決定が出た後に本人(の後見人等)から返してもらうという流れになります。

 なお、申立ての際の弁護士費用等も申立人のご負となります。申立人と本人が異なる場合、弁護士費用は申立人にご請求させて頂きます。弁護士費用等を本人に負担させることはできませんので、ご注意ください。

Q. 成年後見等の申立書式はどのようにして手に入れればよいのでしょうか?

A. 家庭裁判所が書式を準備しています。家庭裁判所の窓口で受け取る、家庭裁判所に郵送を依頼する、あるいは、裁判所のウェブサイトから取得する方法で申立書式を受け取ることができます。最寄りの家庭裁判所にお問い合わせいただくか、家庭裁判所ウェブサイト内の成年後見のページ又は後見ポータルサイトをご覧ください。
 なお、弁護士に依頼をしていただいた場合、申立てに必要な書式は弁護士が準備をします。

Q. 家庭裁判所は成年後見等申立の支援をしてくれますか?

A. 家庭裁判所は、申立ての手続についての案内はしますが、申立書の作成援助等を行うことはありません。また、個別の事案について、成年後見申立てを行うべきか等の質問に回答をすることもできません。ご相談が必要な場合には、専門家にご相談を頂くか、各自治体や社会福祉協議会が設置をしている成年後見に関する窓口をご利用いただくこととなります。

Q. 成年後見・保佐・補助のどの類型にあたるのか、だれが、どのようにして決めるのでしょうか?

A. 最終的な決定は家庭裁判所が行います。
 申立の段階では、診断書の記載や本人情報シート等の記載に基づき、成年後見・保佐・補助のどれにあたりそうかと考え、申立てを行うことになりますが、裁判所は申立書に記載された類型に縛られることなく、審理を行います。なお、実際には、裁判所が、申立時の類型と異なる類型で決定を出したいと考えた場合、申立人に対し、申立ての類型を変更するよう、促してくることが多いです。裁判所は、提出された資料の他、本人との面談、(鑑定が実施された場合)鑑定の結果などを踏まえて、どの類型にあたるか、判断をすることになります。

Q. 診断書はどなたに書いてもらえばよいのでしょうか

A. 医師に作成を依頼します。精神科医・認知症専門医など特定の専門医である必要はなく、普段からご本人の診察をされている主治医がいらっしゃる場合は、その主治医の先生に作成をお願いすることが好ましいとされています。「認知症等の専門医が作成した診断書ではないから効力がない/弱い」ということは、通常はありません。もっとも、診断書の記載内容に不備がある場合などは、家庭裁判所より再度の診断書の取得を求められたり、鑑定が実施されることもあります。

Q. どのような場合に任意後見制度を利用すべきなのでしょうか?

A. 任意後見制度は、「自分の判断能力が衰えた場合に、ある特定の方に財産管理や契約の代行をお願いしたい」という場合に利用される制度です。具体的には、以下のような使い方が想定されています。

① 将来型
 自身の判断能力が低下した場合に備え、あらかじめ任意後見人を選んでおくというものです。自分自身の判断能力が低下した場合に、特定の方のサポートを受けたいというご希望がある場合に利用します。
 法律が想定している任意後見の利用方法は、この将来型となります。

② 移行型
 「現時点では、判断能力に問題はないが、財産の管理は特定の第三者に任せたい。判断能力が衰えた後も、同じ第三者に引き続き財産の管理を任せ続けたい」というご希望がある場合です。このようなご希望がある場合は、「任意後見契約」と同時に「財産管理契約」を結ぶことになります。ご本人の判断能力に問題がない間は「財産管理契約」に基づいて財産の管理を行い、ご本人の判断能力が衰えた時点で「任意後見」への切り替えを行います。このようにすることで、現時点から、判断能力が衰えてしまった後まで、同じ方による財産管理を継続して受けることができるようになります。

③ 即効型
 「現時点でも一定程度の判断能力の衰えはあるが、任意後見契約の内容を理解できるだけの判断能力はある」という方が、特定の方に後見人に就任をしてもらうために任意後見契約を結ぶというものです。このようなケースの場合、任意後見契約を締結した直後に任意後見監督人選任の申立を行い、契約締結後、速やかに契約の効力が発生するよう、調整することになります。
 このような事案では、任意後見ではなく、法定後見制度を利用することもできるのですが、法定後見制度を利用する場合「誰が後見人になるかわからない」という問題があるため、「特定の方に後見人に就任してもらいたい」という希望が強いときに、この「即効型」を利用することになります。
 なお、ご本人の能力がすでに一定以上衰えてしまっており、任意後見契約の内容を理解できないような状態になってしまっている場合には、この「即効型」を利用することはできません。法定後見制度を利用することになります。

Q. 任意後見制度の利用方法について教えてください。

A. 任意後見制度の利用の流れは、

① ご本人の判断能力が十分にあるうちに任意後見契約を結ぶ
② ご本人の判断能力に不安が生じた時点で、任意後見監督人選任の申立を行う
③ 任意後見監督人が選任されたら、任意後見契約の効力が発生する

となります。以下、詳しく説明をさせて頂きます。

① 任意後見契約の作成
 任意後見契約は、公正証書で作成をしなければなりません(任意後見契約に関する法律3条)。公正証書以外で作成した任意後見契約は無効です。
 なお、任意後見契約の作成時には、原則として、公証人は、ご本人と直接面談をしなければならないとされています(平成12年3月13日付 法務省民事局通達「民法の一部を改正する法律等の施行に伴う公証事務の取扱いについて」)。

 任意後見契約は、ご本人と任意後見受任者(将来、ご本人の任意後見人となる方)との間で契約をします。契約ですので、ご本人が「この任意後見人候補者に自分の将来のことをお願いしたい」と考えることが必要ですし、任意後見人候補者の側も「将来、ご本人のために活動したい」と考えることが必要です。両者の意思の合致が必要です。ご本人・任意後見受任者のどちらか一方が希望するだけでは任意後見契約は成立しません。

 任意後見受任者は、原則として誰でもよいこととなっています。ご家族・身内の方が受任者となる場合もありますし、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職が受任者となることもできます。社会福祉協議会などの法人が受任者になることもできます。ご本人から受任者にご依頼をしていただき、受任者が承諾をすれば、どなたでも任意後見受任者になることができます。ただし、法律上、以下の者は任意後見人に就任することはできないとされています(任意後見に関する法律4条1項3号)。
 ・ 未成年者
 ・ 家庭裁判所で法定代理人・保佐人・補助人を解任された方
 ・ 破産者
 ・ 行方不明の方
 ・ 本人に対して訴訟をしている/過去にした方、その方の配偶者・直系血族(父母・子など)
 ・ 不正な行為、著しい不行跡などにより、任意後見人の任務に適しないと家庭裁判所が認める方

 任意後見人に何をお願いするかも任意後見契約の中で決めることができます。通常、財産の管理と身上監護(介護サービス・医療サービスなどの契約・支払手続きなどを代行してもらうこと)を依頼する内容にすることが多いですが、その中の一部のみをお願いすることも可能です。契約は自由なので、法律に違反しない限り、自由に契約内容を作成することができます。契約の内容が法律に違反をしていないかは、公証人が確認をします。

 任意後見人に報酬を支払うか、支払う場合報酬をいくらにするかについても任意後見契約の中で決めることができます。任意後見人受任者が合意をした場合、報酬を「なし」とすることもできます。他方、任意後見監督人の報酬を、任意後見契約の中で決めることはできません。

 以上の契約を、ご本人が元気なうち(十分に判断能力を持っているうち)にしておきます。ご本人がすでに判断能力を失っている場合、任意後見契約を新たに作成することはできません。

 任意後見契約の作成をお考えの方は、任意後見人候補者の方とよくご相談頂いた上で、公証人役場の予約を取るようにして下さい。

 なお、契約の効力が発生する前に任意後見契約を解除したい場合、ご本人、または、任意後見受任者は、いつでも、公証人の認証を受けた書面によって、任意後見契約を解除することができます(任意後見契約に関する法律9条1項)。
 一方、任意後見人に就任した後は、ご本人、又は、任意後見人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、任意後見契約を解除することができるとされています(同条2項)。

② 任意後見監督人の選任
 任意後見契約は、契約を結んだだけでは効力は生じません。ご本人が、精神上の障がいによって判断能力が不十分な状態になり、家庭裁判所で任意後見監督人が選任された時点で、はじめて、任意後見契約の効力が生じることとなります。
 なお、任意後見契約の効力の発生前から任意後見人候補者に財産管理をお願いしておきたいというニーズもあると思います。このような場合には、任意後見契約とは別に、財産管理の委任契約を結んでおく必要があります。公証人役場で任意後見契約を作成する際に、同時に、財産管理契約を公正証書で作成するということもよく行われています。また、任意後見契約はご本人が亡くなられると終了します。この場合も、別途、死後事務委任契約を結んでおくことにより、ご本人死亡後の手続を任意後見人(候補者)に任せることができます。この死後事務委任契約も、任意後見契約と同時に、公正証書で作成されるケースがあります。

 任意後見監督人の選任の申立手続きは以下のとおりです。

 申立てをすることができるのは、ご本人、ご本人の配偶者、ご本人の四親等内の親族、任意後見受任者のいずれかです。ご本人以外の方が申し立てを行う場合、ご本人が判断能力を完全に失っているような場合を除き、ご本人の同意を得る必要があります。
 申立ては、ご本人の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
 申立てに必要な費用については、「Q. 任意後見制度を利用する場合、どの程度の費用が必要になりますか?誰が支払うのでしょうか?」をご覧ください。

 申立ては、申立書をご本人の住所地を管轄する家庭裁判所に提出することによって行います。申立書の書式は、家庭裁判所のウェブサイトから入手するか、家庭裁判所の窓口で受け取ることができます。

 申立書には、ご本人の戸籍謄本(全部事項証明書)、任意後見契約公正証書(の写し)、ご本人の成年後見等に関する登記事項証明書、ご本人の診断書(家庭裁判所の書式があります。家庭裁判所のウェブサイトなどで入手することができます。)、ご本人の財産に関する資料などを添付します。

 任意後見監督人について、候補者がいらっしゃる場合は、その候補者の住民票又は戸籍の附票を提出する必要があります。候補者を定めずに申立てをすることもできます。任意後見監督人を誰にするかは家庭裁判所が決めますので、候補者を立てた場合も、候補者と異なる任意後見監督人が選任される場合もあります。
 任意後見監督人には、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職が選任されるケースが多いです。任意後見受任者本人や、その親族(任意後見受任者の配偶者、直系血族、兄弟姉妹)は任意後見監督人にはなれません(任意後見契約に関する法律5条)。

 以上の申立書や添付資料などを参考に、家庭裁判所が任意後見監督人の選任手続きを行います。任意後見監督人が選任されると、任意後見契約の効力が発生し、任意後見人候補者が、正式に、任意後見人となり、活動を開始します。

③ 任意後見契約の効力発生後
 任意後見監督人が選任され、任意後見契約の効力が発生した後は、任意後見人は、任意後見契約の内容に従い、ご本人のため、財産の管理や身上監護を行います。

 任意後見監督人は、任意後見人が任意後見契約の内容どおり、適正に仕事をしているか、監督します。
 任意後見人は、任意後見監督人からの指示にしたがい、財産目録などを提出するなどして、監督を受けます。また、ご本人と任意後見人の利益が相反する法律行為を行うときには、任意後見監督人がご本人を代理します。
 任意後見監督人は、これらの事務について家庭裁判所に報告をします。家庭裁判所は、任意後見監督人からの報告を参考に、任意後見人が適正に活動をしているか、監督をします。

Q. 任意後見制度を利用する場合、どの程度の費用が必要になりますか?誰が支払うのでしょうか?

A. 任意後見制度を利用する場合の費用としては、以下の4つがあります。

① 任意後見契約の作成費用
② 後見監督人の選任費用
③ 後見監督人の報酬
④ 任意後見人の報酬
(契約で定めた場合に限られます。)

 上記のうち、①③④の各費用は、ご本人(被後見人)の負担となります。②の費用は、原則として、後見監督人の選任申立を行った方が負担します。ご本人が後見監督人の選任申立を行った場合はご本人の負担となります。
 以下、それぞれの費用について説明します。

 ① 任意後見契約の作成費用
 任意後見契約は公正証書で作成しなければならないため、その費用がかかります。通常、以下の費用が必要になります。これらは公証人役場に支払います。

・ 公正証書の作成費用(基本手数料) 1万1000円
・ 任意後見の登記の嘱託手数料      1400円
・ 登記手数料              2600円(収入印紙・登記印紙で支払う)
・ 切手代                数百円程度(公証人が指定した額の切手を持参する)
・ 公正証書の正本・謄本作成費用     1万円程度

 これらに加え、契約書を作成する前提として、戸籍謄本や住民票などをご本人ご自身で収集する必要があり、その手数料として、数百~数千円の費用が発生します。
 また、契約書の原案の作成を弁護士・司法書士に依頼した場合には、弁護士費用・司法書士費用も必要です。
 先ほどもお話ししたとおり、任意後見契約は公正証書で作成しなければならないと法律で定められているため(任意後見契約に関する法律3条)、上記の公正証書の作成費用などは、必ず、必要になります。契約書の原案の作成を弁護士・司法書士に依頼した場合であっても、公正証書の作成費用などが安くなることはありません。

 なお、公証人役場で任意後見契約を作成する際に、同時に公正証書遺言や財産管理契約・死後事務委任契約などの契約書類を作成することもよく行われています。この場合、作成する書類に応じ、それぞれ手数料が必要となります。詳しくは、公証人役場にお問い合わせください。

② 後見監督人の選任費用
 任意後見契約は、後見監督人の選任の申立てをしなければ効力が発生しないため、任意後見を開始するためには後見監督人の選任申立てが必要となります。必要となる費用は以下のとおりです。

・ 申立手数料      800円(収入印紙で支払う)
・ 登記手数料     1400円(収入印紙・登記印紙で支払う)
・ 切手代    数百~数千円程度(家庭裁判所が指定した額の切手を持参する)

 以上の他、申立書の添付資料として戸籍謄本・ご本人の財産に関する書類(のコピー)やご本人の診断書などを添付する必要があり、これらの取得費用、作成費用も申立人の負担となります。戸籍謄本の取得費用は、通常、数百円程度、ご本人の財産に関する書類は、資料によっては取得に数百から数千円程度の手数料が必要となる場合もあります。診断書の作成費用は医師・病院によって異なりますが、3000円から1万円程度になる場合が多いように思います。
 また、家庭裁判所が、ご本人の状態について鑑定(精密検査)を行う必要があると判断した場合、鑑定費用も必要になります。鑑定費用は、鑑定を担当する医者や裁判所の運用によって異なりますが、通常、5万円から20万円程度となります。
 また、手続きを弁護士や司法書士に依頼した場合は、弁護士・司法書士費用が必要になります。手続きを弁護士・司法書士に依頼した場合も、家庭裁判所に納める手数料などは必要となります。また、手続きを弁護士・司法書士に依頼すれば必ず鑑定を回避できるというものではありません。
 上記の各費用は、原則として、後見監督人選任の申立を行う方が負担することとされています。ただし、家庭裁判所の判断により、一部の費用(家庭裁判所に納付する申立手数料や鑑定費用など)が本人負担とされる場合もあります。手続きを弁護士や司法書士に依頼した場合の弁護士・司法書士費用は、ご本人負担とされることはありません。

③ 後見監督人の報酬
 後見監督人には、通常、専門職(弁護士・司法書士・社会福祉士など)が就任しますので、無償となることはありません。後見監督人の報酬は、後見監督人の業務内容に応じ、家庭裁判所がその額を決めます。そのため、決まった「相場」はありませんが、月額5000円~数万円程度となるケースが多いように思われます。一部の家庭裁判所は、報酬基準を公表しています。
 この後見監督人の報酬は、ご本人の負担となります。任意後見人が支払うわけではありません。実際の運用としては、「年に1回、家庭裁判所が報酬の決定をして、この決定をもとに、後見監督人が任意後見人に1年分の報酬(と実費)の請求を行う。任意後見人は、ご本人の財産から後見監督人の報酬と実費を支払う。」という流れになることが多いかと思います。

④ 任意後見人の報酬
 任意後見人の報酬は、任意後見契約を作成する段階で、契約の中で決めておくことになります。契約の中で報酬をどのように定めるかは自由なので、任意後見人に就任する方(任意後見受任者)が合意をすれば、無償とすることもできます。
 任意後見人が活動をするにあたり必要となった実費(交通費など)もご本人の負担となります。必要に応じ、ご本人の財産から生産を行います。このとき、後に家庭裁判所や後見監督人に説明をするための資料を残しておく必要があります。
 任意後見人が、定められた報酬や認められる実費以外の報酬などをご本人から受け取った場合、(業務上)横領となります。家庭裁判所により任意後見人を解任されることもありますし、刑事罰を科される可能性もありますので、そのようなことはしないようにして下さい。

Q. 後見人(・保佐人・補助人)を変更することはできますか?

A. 家庭裁判所の許可がなければ変更をすることはできません。
 後見人等の側から交代を申し出るケース、被後見人等の側から変更を求めるケースのどちらもあり得ますが、単に「相性が悪い」というだけでは、変更は認められないことが多いように思われます。変更が認められるケースは、横領等の違法行為を行った場合等に限られる印象です。このようなケースでは、申立てを待たず、裁判所が職権で解任することもあります。
 他方、後見人等の側から変更を申し出るケースとしては、後見人等の転居・高齢・体調不良等による業務困難の他、例えば法律問題が解決したことによって法律専門家である弁護士から福祉関係者への変更を求めるケースがあります。最近、後者のように、後見人等が果たすべき役割に応じて後見人等の変更(あるいは追加、削減等)に柔軟に対応する方針がとられるようになってきています。

Q. 後見人(・保佐人・補助人)を外すことはできますか?

A. 家庭裁判所の審判がなければ外すことはできません。
 また、後見人等の変更の場面とは違い、後見人等を外す場合には「後見等の開始の要件がなくなったこと」=「事理弁識能力が回復したこと」を裁判所に認めてもらわなければならないため、非常にハードルが高くなっています。病状によってはそもそも回復しないとされているものもあるため、後見人等を外すことが認められるケースはかなり少ないといえます。「後見人等を付けたら一生外すことはできない」と言われることがあり、これは不正確ではあるのですが、外れるケースがほとんどないことは事実です。ある契約や手続等のために、スポット的に後見人等を付す制度についての議論もありますが、現時点では制度化されていません。

Q. 申立てのきっかけとなったこと(遺産分割・不動産の売却など)が終了し、後見人(・保佐人・補助人)の仕事はなくなりました。それでも後見人等を外すことはできないのでしょうか?

A. 申立てのきっかけとなった課題が解決したとしても、後見・保佐・補助は終了しません。「後見等の開始の要件がなくなった」という事情が発生しない限り、後見・保佐・補助は、ご本人が亡くなられるまで続きます。

 なお、課題が解決したことを理由として、後見人等が交代することはあり得ます。この場合、後見人等から裁判所に対し、後見人の辞任・選任の申立をすることになります。

Q. 家庭裁判所から、後見制度支援信託・後見制度支援預金を利用するよう、指示を受けました。これはどのような制度なのでしょうか?

A. 「後見制度支援信託」・「後見制度支援預金」とは、ご本人(成年後見制度による支援を受けている方)の預貯金のうち、日常的な支払いをするのに必要十分な金銭は後見人が管理をし、残りの通常使用しない金銭を「信託銀行」や「後見制度支援預金」を設定している信用金庫や信用組合などに預ける、この「信託銀行」の口座や「後見制度支援預金」からの引き出しを受けるためには、家庭裁判所の発行する「指示書」が必要になるという制度です。つまり、ご本人の財産のうち、日常使う財産は後見人が管理をして、日常使うことのない財産は信託銀行や信用金庫・信用組合などの特殊な口座で管理をする、信託銀行や信用金庫・信用組合の口座からお金を引き出すためには家庭裁判所の指示が必要になる、という制度です。この制度は、主に、親族後見人の方が後見人に就任される場合で、ご本人がある程度の資産を持っておられる場合に、家庭裁判所の指示により、利用する制度になります。なお、後見人が管理をする「日常使う財産」の金額は、100万円から500万円程度と設定されることが多いとされ、残りの財産を信託銀行や銀行の特殊な口座で管理をすることになります。

 「後見制度支援信託」・「後見制度支援預金」の利用は、成年後見と未成年後見の場合に限られます。保佐・補助・任意後見でこれらの制度を利用することはできません。また、これらの制度を利用して預けることのできる財産は金銭のみに限られています。金銭以外の財産を預けることはできません。

 「後見制度支援信託」と「後見制度支援預金」の違いは、以下のとおりです。

後見制度支援信託後見支援制度預金
対象成年後見・未成年後見成年後見・未成年後見
制度利用の端緒家庭裁判所の指示がある後見人が自ら利用を決める場合と家庭裁判所からの指示がある場合がある
取扱金融機関一部の信託銀行など一部の信用金庫・信用組合など
利用対象財産金銭に限る金銭に限る
最低の預入額各信託銀行等によって最低預入額が設定されている通常、設定されていない
銀行の手数料各信託銀行等によって手数料が設定されていることがある通常、設定されていない
財産の払い戻しの方法家庭裁判所からの指示書が必要家庭裁判所からの指示書が必要
専門職の関与必ず専門職の後見人が関与をする専門職の後見人が関与をするかは家庭裁判所が判断する

 以下、それぞれの制度について、詳しく説明をします。

① 後見制度支援信託
 後見制度支援信託を利用する場合、家庭裁判所が後見人を選任する時点で、家庭裁判所から利用の指示があります。

 家庭裁判所は、後見制度支援信託の利用を想定している場合、原則として、親族の後見人と弁護士・司法書士などの専門職の後見人の2名を、後見人として選任します。どの信託銀行などを利用するかは、専門職の後見人が選ぶことになります。専門職の後見人は、家庭裁判所と協議をし、利用する信託銀行や利用する契約を決定することになります。
 この信託銀行との契約が完了した時点で、専門職の後見人は後見人から外れます。このとき、専門職の後見人の報酬が必要になります。また、利用する信託銀行や契約によっては、信託銀行の利用手数料が発生することもあります。

 信託銀行との契約が終了した後は、ほぼ、通常の後見業務と同じです。後見人は、年金などの定期的な収入の受け取りや介護サービス利用料の支払いなど、日常的に必要な金銭の管理を行います。ご本人の収入よりも支出の方が多くなることが見込まれる場合には、信託銀行との契約で、信託財産から必要な金額が定期的に送金されるようにすることがあります。
 普段の業務では、信託銀行に預けている金銭の払い戻しを受けることはありません。しかしながら、何らかの事情で信託銀行からの払い戻しが必要になることもあり得ます。この場合に、後見人は、家庭裁判所に必要な金額とその理由を記載した報告書を裏付け資料とともに提出することになります。家庭裁判所は、報告書の内容に問題がないと判断すれば指示書を発行します。後見人は、この指示書を信託銀行に提出し、必要な金銭を信託財産から払い戻してもらいます。
 また、逆に、ご本人の収支の黒字が大きい場合や臨時収入があるなどして、後見人が管理をする財産が多額になった場合には、家庭裁判所の指示書を受け取って、信託財産を追加することになります。

 なお、後見制度支援信託の利用は、家事事件手続規則に基づく裁判官の指示によるものとされています。家庭裁判所裁判官からの指示に対する不服申立てはできません。

② 後見制度支援預金
 後見制度支援預金の利用については、後見人が利用を決めて家庭裁判所に申し出をする場合と、家庭裁判所が後見人に対して利用の指示をする場合があります。

 後見人は、ご本人の日常の生活費に必要な金銭を超えた財産があると判断し、「後見制度支援預金」を利用したほうが良いと考えた場合、後見人は、家庭裁判所に「後見制度支援預金」を利用したいと申し出ることで、家庭裁判所が指示書を発行し、制度の利用を開始することになります。後見人は、家庭裁判所の指示書をもってサービスを提供している信用金庫・信用組合に行き、口座を開設し、通帳のコピーを家庭裁判所に提出することになります。家庭裁判所の指示書がない場合、この制度を利用することはできません。

 家庭裁判所から利用の指示があるケースの流れは、後見制度支援信託を利用する場合とほぼ同じです。家庭裁判所が専門職(弁護士・司法書士など)の後見人を選任し、その後見人が「後見制度支援預金」を利用するための手続を行います。専門職後見人は、制度の利用開始の手続を行った後、後見人から外れます。

 後見制度支援預金の利用を開始した後の流れは、後見制度支援信託を利用している場合と同じです。日常の生活に必要な金銭の管理については、後見人が行います。「後見制度支援預金」への出入金が必要となった場合には、後見人は、家庭裁判所に申し出をして「指示書」を受け取り、この「指示書」を使って出入金を行うことになります。

 なお、どの金融機関で後見制度支援信託、後見制度支援預金を使うことができるかは、ウェブサイトなどで検索をしてみてください。

Q. 南池袋法律事務所に相談・依頼をする流れを教えてください。

A. まずは電話又はメールでお問い合わせ下さい。当事務所の弁護士からご連絡を差し上げます。電話又はメールで簡単に内容をお伺いした後に、来所の予約をお取りします。来所することが困難な場合には、出張相談を検討させていただきます。
 当事務所との間で委任契約書の取り交わしが完了しましたら、事件を進めていきます。
 依頼をお受けした後は、手続きに応じ、必要な資料の取得、関係者との面談、書類の作成、裁判所対応等を進めさせていただきます。
 詳細はこちらのページもご覧下さい。→ご依頼の流れ

Q. 南池袋法律事務所に手続きを依頼した場合の費用について教えてください。

A. 南池袋法律事務所に成年後見等の申立ての手続をご依頼していただく際の費用はこちらをご覧ください。事案によって弁護士の費用等が異なりますので、まずは事案をお伺いし、見積もりをさせて頂きます。
 成年後見等申立以外の事件については、通常の事件の報酬基準にしたがって費用を算出します。詳しくはこちらをご覧いただくか、お問い合わせください。