婚姻費用の算定で引かれる「職業費」とは?具体例と計算の仕組み

婚姻費用の算定で引かれる「職業費」とは?

別居中の生活費(婚姻費用)や離婚後の養育費を計算する際、家庭裁判所が公表している「算定表」が使われることはご存じの方も多いと思います。
この算定表は、当事者双方の「総収入(額面)」から税金などの必要経費をあらかじめ差し引いた「基礎収入」をもとに作られています。

その必要経費の一つが、職業費です。
「自分の給料から、勝手に何かの経費が引かれて計算されているの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
今回は、職業費とは何か、その割合の目安、そして計算上どのような意味を持つのかについて、弁護士の視点からわかりやすく解説します。

1. 婚姻費用の計算で「職業費」はどのような意味を持つか?

婚姻費用や養育費は、生活保持義務(自分と同程度の生活を相手にも保持させる義務)に基づいて分担されます。
実務上の計算(標準算定方式)では、総収入から以下の3つの経費を差し引いて、生活費のベースとなる基礎収入を算出します。

【基礎収入を算出するために差し引かれる主な経費】
  • 公租公課(所得税・住民税・社会保険料など)
  • 特別経費(住居費・医療費・保険掛金など)
  • 職業費

職業費とは、働くためにどうしてもかかる経費だから、婚姻費用の計算からあらかじめ除外して手元に残しておきましょうという、働く人を保護するための考え方に基づくものです。

2. 「職業費」とは具体的にどのような費用なのか?

実務上は個別のレシートを集めるわけではなく、統計データに基づき、理論値として算出されています。
職業費として考慮される主な費目は以下のとおりです。

職業費に含まれる主な内容
  • 被服および履物(スーツや仕事用の靴など)
  • 交通・通信費(通勤費や仕事関連の通信費)
  • 書籍・その他の印刷物(仕事に必要な書籍や資料)
  • 諸雑費・小遣い / 交際費(仕事上の付き合いなど)

自動車の維持費や教養娯楽費などは職業費に含まれないものとして扱われています。

3. 職業費の具体的な割合(パーセンテージ)はどれくらい?

給与所得者の場合、令和元年に改定された現在の算定方式では、概ね 13〜18% が職業費の割合とされています。

収入が低いほど割合が高い
年収が低い層では、総収入の約18%が職業費とみなされます。
高額所得者ほど割合が下がる
年収が高くなるにつれて割合は低下し、年収1,500万〜2,000万円の層では約13%程度となります。

自営業者の場合は? 自営業者の場合、売上からすでに必要経費を差し引いた後の「所得金額」をもとに算定します。
そのため、給与所得者のような「職業費」を改めて差し引くことはしません(二重控除の防止

4. 職業費が差し引かれない場合の具体例

働かずに得ている収入(不労所得)には職業費を差し引く必要がありません。具体的には、以下のような収入が該当します。

  • 年金収入
  • 雇用保険による給付(失業手当など)
  • 株式の配当金

これらの収入に対して職業費を差し引いてしまうと、基礎収入が不当に低く算出され、相手方にとって不公平な結果になります。
実務では、年金生活者等については職業費は不要として扱われます。

5. 正確な婚姻費用の算定には専門家の視点が不可欠

婚姻費用の算定表は一見シンプルに見えますが、その裏には「職業費」をはじめとする緻密なロジックが存在します。
相手が年金生活とアルバイトを掛け持ちしている自営業だが経費を過大に計上している気がする、このような複雑なケースでは、単純に算定表を参照するだけでは適正な金額を導き出すことはできません。

「適正な婚姻費用がいくらになるのか」「相手の主張する金額は正しいのか」など、少しでも不安を感じたら、一人で悩まずにお早めに当事務所へご相談ください。

南池袋法律事務所では、法律と算定実務に基づいた正確な見通しをお伝えし、あなたの生活を守るためのサポートをいたします。

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